頭を抱える介護士

今回は、介護職員処遇改善加算が「もらえない」ケースについて、現場の声や制度の仕組みを交えながらわかりやすく解説していきます。

毎日忙しく働く介護職の方にとって、処遇改善加算は大事な収入源のひとつ。それがなぜ支給されないのか、どうすれば改善できるのかを知ることで、より良い働き方に近づけるはずです。

そもそも介護職員処遇改善加算って?

この加算は、国が介護職の待遇改善を目的に設けた制度で、事業所が条件を満たすことで報酬に上乗せされる仕組みです。目的は、介護職員の離職防止やモチベーション向上、安定した人材確保など。事業所に入ってくるこの加算は、本来、介護職員の給与アップに使われるべきものです。

しかし実際には「うちの施設、もらえてない」「処遇改善加算って何?」という声も少なくありません。その背景には、さまざまな事情や制度の難しさがあります。

もらえない理由① 事業所が加算申請をしていない

いちばん多いのが、このパターン。加算を受け取るには、事業所が毎年国に申請を出し、要件をクリアする必要があります。ですが、加算取得の手続きが煩雑であったり、加算を受け取った後の人事・賃金体制の整備が必要だったりと、手間や負担が理由で申請を見送る施設もあるのです。

「うちは加算もらってないのよ、申請してないから」というケース、実は結構あります。

もらえない理由② 働いているサービス種別が対象外

加算の対象になるのは、訪問介護や特養、グループホームなど一部の介護サービスに限られます。訪問看護や福祉用具の貸与などは制度の対象外。そのため、どんなに頑張って働いていても、制度の対象サービスでない限り加算は受けられないのです。

「同じ介護の仕事なのに不公平…」と思う方も多いですが、制度上の線引きがあるため仕方のない部分もあります。

もらえない理由③ 介護職じゃない職種で働いている

処遇改善加算は「直接介護」に関わる職員向けの制度。事務職や看護師、生活相談員など、介護に間接的に関わる職種は対象外とされることが多いです。たとえ介護施設で働いていても、「介護職」として採用されていなければ、加算の恩恵を受けられないこともあります。

もらえない理由④ 雇用形態・資格による差がある

施設によっては、正社員の介護福祉士にだけ加算を手厚く支給し、パートやアルバイト、無資格の職員にはごくわずかしか支給しないという実態もあります。

これは制度上、事業所に「配分の自由」があるから。全職員に均等に配らなければならないわけではなく、経営判断で配分割合を決められるのです。そのため、同じように働いていても「正社員のAさんには月2万円、パートのBさんには月3,000円」といった格差が生まれることもあります。

ピンハネってされるの?本当のところ

処遇改善加算は、その全額を介護職員の処遇に使うことが義務付けられています。つまり、施設が自由に使っていいお金ではなく、職員への賃金や手当として還元する必要があります。

ただし、「どのように分配するか」については細かいルールがないため、結果として一部の職員に偏った配分がされてしまうことも。これがいわゆる「ピンハネ」と感じられる原因になっているのです。

もちろん、明らかな不正流用は法律違反ですが、ルールの“隙間”を使って最低限の支給だけをして、残りを施設の運営費にまわしている…そんなケースもゼロではないと言われています。

どうしたらもらえる?対処法とアドバイス

1. まずは勤務先の加算取得状況を確認

勤務先が加算を取得しているかどうかは、事業所の運営規程や人事資料で確認できます。わからない場合は、上司や事務担当に聞いてみるのも大事な一歩です。知らないままでいると、ずっと不透明なまま働くことになります。

2. 就業規則・給与規定のチェック

加算が支給されている場合でも、どういった条件で、いくら支払われているかは事業所によって異なります。「介護福祉士だけ支給」「半年以上の勤務が条件」など、細かいルールがある場合も。給与明細に記載されていないこともあるため、定期的に確認しておきましょう。

3. 納得できないなら転職も視野に

「頑張っても評価されない」「加算が支給されない」…そんな状態が続くなら、思い切って転職を考えてみるのも選択肢です。今は介護業界全体が人手不足で、処遇改善加算をしっかり運用している事業所もたくさんあります。転職支援サービスなどを活用して、条件の良い職場を探してみましょう。

まとめ

介護職員処遇改善加算は、国の制度としてきちんと整備された、介護職にとって大事なサポート制度です。

しかし、実際には勤務先の対応や制度の運用状況によって、「もらえない」状況が生まれてしまっています。自分が制度の対象になっているのか、どういった配分がされているのかをしっかり確認し、不透明なままにしないことが大切です。

もし、いまの職場で納得のいかない状況が続いているなら、新しい環境で働くことで理想に近づけるかもしれません。しっかり情報収集して、自分に合った働き方を見つけてくださいね。