
介護職の転職を考えている方にとって、履歴書の書き方や志望動機の伝え方は非常に重要です。特に経験者の場合、これまでのスキルや実績をしっかりとアピールすることで、採用率が大きく向上します。
本記事では、介護職経験者が採用担当者に好印象を与える履歴書の書き方と、すぐに使える志望動機の例文を紹介します。
1. 介護職経験者の履歴書で重視すべきポイント
ポイント1 即戦力アピールは必須
介護業界は慢性的な人手不足により、採用担当者は「すぐに現場で活躍できる人材」を強く求めています。単に「介護経験があります」と記載するだけではなく、どのような介護業務を行っていたか、どの程度の人数の利用者を担当していたか、どのような場面でリーダーシップを発揮したかなど、具体的に記載することが大切です。
【記載例】
- 特別養護老人ホームで5年間勤務し、認知症ケアチームのリーダーとして10名のスタッフを統括。
- デイサービスにて1日平均30名の利用者対応と個別リハビリ補助を担当。
- 新人職員へのOJT指導を年間5名実施し、早期定着率向上に貢献。
ポイント2 具体的な実績を「数字」で示す
「頑張りました」「対応しました」といった抽象的な表現は避け、数値や成果を用いて客観的にアピールしましょう。採用担当者は、成果が見える人材に対して安心感を持ちやすいです。
【良い例】
- レクリエーションの参加率を月平均60%から80%に向上。
- 夜勤体制の見直しを行い、職員の離職率を前年より15%改善。
- 喀痰吸引等研修を修了し、医療的ケアの対応回数を月10件実施。
ポイント3 保有資格は見やすく一覧化
介護現場では即戦力となる資格の有無が大きな判断材料になります。履歴書の資格欄は見落とされやすいため、職務経歴書内にも別途【保有資格一覧】を設けるのがおすすめです。
【記載例】
- 介護福祉士(取得:2022年3月)
- 実務者研修修了(2021年8月)
- 認知症介護実践者研修修了(2020年6月)
- 喀痰吸引等研修修了(2023年1月)
- 普通自動車運転免許(AT限定)
※送迎業務がある施設では運転免許の有無も重要視されるため、記載を忘れないようにしましょう。
ポイント4 志望する施設の特徴に合わせたアピール
履歴書では、志望先がどのような介護サービスを行っているか(特養、老健、デイサービス、小規模多機能など)を理解した上で、自分の経験がどのように活かせるかを書くことが重要です。
【例】
- 特養なら…認知症ケア、ターミナルケアの経験をアピール
- 老健なら…リハビリ補助、在宅復帰支援の実績を記載
- デイサービスなら…レクリエーション企画・実行力、コミュニケーション能力の高さを強調
ポイント5 キャリアプランを簡潔に添える
採用担当者は「この人は長く働いてくれるか」「将来はリーダーになれるか」といった点にも注目しています。そのため、キャリアプランを簡単に記載すると、成長意欲の高い印象を与えることができます。
【記載例】
- 「今後は介護福祉士として更に専門性を高め、将来的にはケアマネジャー資格の取得を目指しています。」
- 「チームリーダーとして、より働きやすい職場環境づくりにも貢献したいと考えています。」
2. 実績が伝わる職務経歴書の書き方

【職務経歴書の基本構成】
- 職務要約
- 職務経歴(勤務先ごとに記載)
- 保有資格・スキル
- 自己PR
1. 職務要約
最初に簡潔な自己紹介として、これまでの介護職経験を要約します。応募先の施設が求めている人材に合致していることを意識し、経験年数・得意分野・リーダー経験などを盛り込みましょう。
【例文】
「介護職として8年間の実務経験があり、特別養護老人ホームやデイサービスなど多様な施設で勤務してまいりました。認知症ケアやレクリエーション活動に強みがあり、直近では認知症ケアチームのリーダーとしてスタッフ育成や利用者満足度向上に貢献いたしました。」
2. 職務経歴
各勤務先ごとに、「勤務期間」「施設種別」「担当業務」「実績」「役職・リーダー経験」などを具体的に記載します。数値データや具体的な成果を盛り込むことで、説得力が大幅にアップします。
【記載例】
勤務先:社会福祉法人〇〇会 特別養護老人ホーム「さくら苑」
勤務期間:2019年4月 ~ 2024年3月
【担当業務】
- 入所者80名に対する身体介護(食事・入浴・排泄支援)、生活援助全般
- 認知症ケア専門チームのリーダーを担当(チームメンバー10名)
- 新人職員・実習生への教育・指導(年間8名担当)
- 家族対応・カンファレンスの進行
- 看取りケアの実施(年間5件)
【実績】
- 認知症ケアプログラムの導入により、BPSD(行動・心理症状)発症率を前年比15%低下
- レクリエーション活動の改善により、利用者満足度アンケートで90%以上の「満足」回答を獲得
- 離職率の高かった夜勤スタッフの勤務体制を見直し、離職率を20%改善
勤務先:株式会社〇〇ケア デイサービスセンター「ひまわり」
勤務期間:2016年4月 ~ 2019年3月
【担当業務】
- 1日平均30名の利用者様への生活支援・リハビリ補助
- 個別機能訓練計画の作成補助、家族への経過報告
- 季節イベントや日々のレクリエーション企画・運営
- 送迎業務(運転・乗降介助)
【実績】
- 月1回の大型イベントを企画し、利用者参加率を前年比20%向上
- 個別機能訓練計画の見直しにより、ADL(日常生活動作)改善率15%向上
- 安全運転講習会の実施により、送迎時のヒヤリハット件数を50%削減
3. 保有資格・スキル
取得した資格はすべて記載し、取得年月も忘れずに記入します。介護業務に関連するPCスキルや福祉用具の取扱いスキルがあれば併記すると効果的です。
【例】
- 介護福祉士(2022年3月取得)
- 実務者研修修了(2021年8月)
- 認知症介護実践者研修修了(2020年6月)
- 喀痰吸引等研修修了(2023年1月)
- 普通自動車第一種運転免許(AT限定)
- Microsoft Office(Word、Excel)基本操作
4. 自己PR
自己PRは「どのように職場に貢献できるのか」を中心に記載します。採用担当者に「ぜひ一緒に働きたい」と思わせるような前向きな内容にしましょう。
【例文】
「これまでの介護経験で培った認知症ケアやレクリエーション企画のスキルを活かし、利用者様が安心して楽しく過ごせる環境づくりに貢献してまいりました。今後は介護福祉士の知識を活かし、より専門性の高いケアを提供しつつ、後輩スタッフの育成にも力を入れ、チーム全体のスキル向上に努めてまいります。」
3. 採用されやすい志望動機のポイント(詳細版)
ポイント1「なぜこの施設を選んだのか」を明確に伝える
介護施設は、それぞれ介護方針・提供サービス・職場環境が異なります。採用担当者は「自社に興味を持ってくれているか」を非常に重視しているため、必ず施設の特徴や取り組みに共感した理由を述べましょう。
【NG例】
「介護福祉士の資格を活かしたいと思い応募しました。」←一般的すぎて印象に残らない
【良い例】
「貴施設が導入されているパーソン・センタード・ケアに共感し、利用者様一人ひとりに寄り添った支援ができる点に魅力を感じました。」
ポイント2「自身の経験がどう活かせるか」を具体的に伝える
過去の経験が、応募先の施設でどのように役立つのかを明確に示すことが重要です。ただ単に「経験があります」と書くのではなく、「○○の経験を活かして、□□に貢献したい」と具体的に表現します。
【良い例】
「これまで特別養護老人ホームで培った認知症ケアの経験を活かし、貴施設でも利用者様が安心して過ごせる環境づくりに貢献したいと考えております。」
ポイント3「今後どのように成長していきたいか」を伝える
採用担当者は、「この人は長く働いてくれるのか」「将来的にどのようなポジションを目指すのか」にも注目しています。自分のキャリアビジョンを簡潔に伝えることで、成長意欲と職場定着への意欲をアピールできます。
【良い例】
「介護福祉士として現場経験を積み重ねながら、将来的にはケアマネジャーの資格取得を目指し、より質の高い介護サービスを提供できるよう努めてまいります。」
ポイント4「志望動機は応募先ごとに必ずカスタマイズする」
志望動機はテンプレートを使い回さず、応募する施設に合わせた内容に調整しましょう。採用担当者は、志望動機の内容から「どれだけ当社に関心を持っているか」を見抜いています。
【カスタマイズする際の着目ポイント】
- 法人の理念や方針(公式サイトや求人票を確認)
- 施設のサービス内容(特養・老健・デイサービスなど)
- 介護方針(例:認知症ケア専門、リハビリ特化型など)

志望動機 例文集
・特別養護老人ホームへの応募の場合
「これまで特別養護老人ホームで5年間勤務し、認知症ケアチームのリーダーを経験してまいりました。貴施設が取り組まれている認知症ケアの質の向上に強く共感し、これまで培ってきたケア技術やチームマネジメントの経験を活かして、利用者様が安心して穏やかに過ごせる環境づくりに貢献したいと考えております。」
・デイサービスへの応募の場合
「デイサービスで3年間勤務し、レクリエーションの企画・実施や利用者様への機能訓練補助に携わってまいりました。貴施設が力を入れておられる個別機能訓練や多彩なレクリエーション活動に大変魅力を感じております。これまでの経験を活かし、利用者様が毎日笑顔で過ごせるような楽しい時間を提供してまいります。」
・介護老人保健施設(老健)への応募の場合
「介護老人保健施設での勤務経験を通じて、在宅復帰支援に注力してまいりました。貴施設の『自立支援を重視したリハビリテーション』という理念に共感し、私の経験を活かして利用者様が自立した生活を取り戻せるようサポートさせていただきたいと考えております。」
・【例文あり】介護職経験者向け 志望動機サンプル
■ 特別養護老人ホーム(特養)への志望動機
「これまで特別養護老人ホームで6年間勤務し、認知症ケアや終末期ケアを中心に経験を積んでまいりました。特に、認知症の方に対するBPSD(行動・心理症状)への対応には自信があり、ケアプランの見直しや環境調整を通じて、利用者様の安心感を高める取り組みを行ってきました。貴施設が取り組まれているパーソン・センタード・ケアの考え方に深く共感し、これまでの経験を活かして、ご利用者様一人ひとりに寄り添った質の高い介護を提供したいと考えております。」
■ 介護老人保健施設(老健)への志望動機
「介護老人保健施設において4年間勤務し、主に在宅復帰を目指す利用者様へのリハビリ補助や生活機能向上支援に携わってまいりました。貴施設では自立支援と在宅復帰支援に力を入れておられ、その点に大変魅力を感じております。今後は、介護福祉士としてリハビリテーションの知識も深め、利用者様が一日でも早くご自宅で安心して生活できるよう、積極的に支援してまいります。」
■ デイサービスへの志望動機
「デイサービスセンターで3年間勤務し、利用者様に楽しんでいただけるレクリエーションの企画・運営や、日常生活動作の維持向上に向けたサポートを行ってまいりました。貴施設は、多彩なレクリエーション活動と個別機能訓練を通じて、利用者様の生活の質を高めることに取り組まれており、私のこれまでの経験を存分に活かせると感じております。今後は、より多くの笑顔を引き出せるような活動を企画し、利用者様の充実した日常生活をサポートしてまいります。」
■ グループホームへの志望動機
「グループホームでの勤務経験を通じて、認知症をお持ちの利用者様との信頼関係の構築に注力してまいりました。小規模な生活単位でのケアは、利用者様にとって安心感を得やすく、自分らしい生活を送るうえで大変重要だと実感しています。貴施設では、『その人らしさ』を大切にしたケアを実践されている点に共感し、これまでの認知症ケアの経験を活かして、ご利用者様の生活の質向上に貢献したいと考えております。」
■ 夜勤専従スタッフへの志望動機
「介護職としての勤務経験の中で、夜勤帯における利用者様の不安軽減や安心した休息の提供にやりがいを感じ、夜勤専従としての勤務を希望しております。これまでの経験から、夜間特有の緊急対応や体調変化への細やかな観察力を身につけており、冷静かつ迅速な判断で適切な対応が可能です。貴施設でも、利用者様が安心して夜間を過ごせるよう、心身のケアに努めてまいります。」
■ キャリアアップ志向を盛り込んだ志望動機
「介護福祉士の資格を取得し、今後はケアマネジャーの資格取得を目指して更なる知識と経験を積みたいと考えております。貴施設では、スタッフのスキルアップ支援にも積極的に取り組まれている点に魅力を感じております。将来的にはチームリーダーとして職場環境の改善にも貢献できるよう努力し、より良い介護サービスの提供に努めてまいります。」
まとめ
介護職経験者の転職では、経験や資格を具体的にアピールすることが重要です。採用担当者は「この人ならすぐに現場で活躍してくれそうだ」と感じるかどうかを重視しています。志望動機では、「なぜこの施設で働きたいのか」「どのように貢献できるのか」を具体的に伝えましょう。しっかりと準備を整えて、理想の職場への転職を成功させましょう。