退職届

介護職は高齢者や障がい者の生活を支える重要な仕事であり、やりがいも大きい一方で、離職率が高い業界としても知られています。

実際に介護職を辞めた人たちの声を元に、主な退職理由を詳しく解説します。


介護職を辞める主な理由

人間関係のストレス

介護職において「人間関係の問題」は、離職理由として常に上位に挙げられる重大な要因です。介護という仕事の特性上、スタッフ間の密接な連携、利用者との長時間接触、その家族との対応など、「人と関わること」が避けられない環境だからこそ、コミュニケーションにおけるストレスが顕在化しやすいのです。

以下に、具体的な人間関係の問題とその背景を細かく解説します。

上司が感情的・高圧的であるケース

「大声で怒鳴る」「業務ミスを他の職員の前で晒す」「無視や陰口を言う」といったパワハラまがいの言動は、現場で実際に多く報告されています。
特に閉鎖的な職場では「このくらい当たり前」という空気があり、新人や若手職員が精神的に追い詰められる原因になります。

指導が曖昧 or 放任主義

逆に「教えてくれない」「手本を見せずに放り出す」など、教育体制が整っていないことも問題です。新人職員がミスを恐れて萎縮し、誰にも相談できず孤立する状況は、非常にストレスが大きく、離職の直接的な要因となります。


職員同士の派閥・いじめ・無視

派閥化によるチーム崩壊

介護現場では長年勤めているベテラン職員と、新しく入った若手・中途採用職員との間に情報格差や温度差が生まれやすく、自然と派閥ができることがあります。「○○さん派」といった内輪の空気が強くなると、馴染めない職員は孤立しやすくなります。

陰口・無視・情報の共有拒否

悪質なケースでは、「あの人は使えない」「新人は黙って言うことを聞けばいい」など、陰口や無視、仕事上の連携ミスをわざと誘発するような嫌がらせが行われることもあります。
これにより「居場所がない」「何をしても否定される」と感じ、精神的なダメージが蓄積していきます。


利用者や家族からの理不尽な言動

利用者からの暴言・暴力

認知症の進行により、暴言・暴力・セクハラ的発言があるケースもあります。介護職員は対応に慣れているとはいえ、連日繰り返されると心身に大きな負担をもたらします。

家族からの過剰な要求・クレーム

「もっと丁寧にして」「前の担当者の方がよかった」「この前もミスしてたよね?」といった理不尽な要求や一方的なクレームは、現場の士気を大きく下げます。
特に「介護のプロなんだから完璧で当然」という態度をとられると、職員は自己肯定感を失い、離職を決断する大きなきっかけになります。


感情労働としての側面が強い

表には出せない感情のコントロール

介護職は「感情労働」とも呼ばれます。どんなに辛くても、表面上は明るく、丁寧で、優しく対応する必要があります。
その一方で、**自分の感情を抑え続ける日々が続くと、燃え尽き症候群(バーンアウト)に陥る危険性があります。

「感謝されない」「認められない」という無力感

日々努力していても、職場からの評価がなかったり、利用者や家族から感謝されなかったりすると、「自分の存在価値はあるのか?」と自己否定感を強く感じてしまうケースもあります。


メンタル不調 → 離職という流れ

こうした人間関係のストレスが積み重なると、以下のような心理的症状が現れます。

  • 朝になると職場に行きたくなくなる(出勤拒否感)
  • 夜になると動悸や不安で眠れない
  • ミスが怖くて仕事が手につかない
  • 人と話すのが怖くなる
  • 職場のことを考えるだけで涙が出る

このような状態が続くと、うつ状態や適応障害、過呼吸などの健康被害を引き起こし、結果的に辞職せざるを得なくなるという流れが多く見られます。


ストレスを軽減する職場の取り組み(改善例)

  • 定期的なメンタルチェックやカウンセリングの導入
  • 外部の第三者相談窓口の設置(匿名相談OK)
  • ハラスメント防止マニュアルの配布と研修実施
  • 感謝カード制度(職員同士で「ありがとう」を伝える取り組み)
  • 日報・報告書に上司からのねぎらいコメントを追加する工夫

ありがとうございます。それでは、以下にご提示いただいた各項目をより詳細に・現場のリアルさを反映させて拡充いたします。


体力的な負担と健康への影響

介護職は、肉体的な負担が非常に大きい仕事です。日々の業務には、以下のような“身体へのダメージ”を伴う作業が多く含まれています。

長時間の立ち仕事と移動による疲労

入居型施設では、一日中立ちっぱなしで動き続けることが当たり前です。移動距離も多く、ナースコールの対応に走り回ることもしばしば。「座って休めるのは昼休憩の30分だけ」という施設も存在します。

移乗・体位変換・入浴介助による身体への負荷

高齢者をベッドから車椅子へ移す「移乗介助」や、入浴時に全身を支える「入浴介助」など、体重を支える・持ち上げる作業が常に求められます。これにより、腰痛・膝の痛み・肩の腱板損傷などを訴える人が多く、慢性疾患に発展するケースも少なくありません。

夜勤による生活リズムの崩壊

夜勤では、19時~翌朝9時などの長時間勤務に加え、仮眠も断続的で、熟睡は困難です。
睡眠の質が低下し、以下のような健康リスクが高まります。

  • 睡眠障害(不眠・中途覚醒)
  • 自律神経の乱れ(めまい、食欲不振)
  • 免疫力低下(風邪・体調不良が長引く)
  • 生活習慣病(高血圧・肥満など)

年齢による体力の限界

20代・30代のうちはこなせても、40代以降になると身体的な回復が追いつかなくなり、「もう体がついていかない」と感じて退職を選ぶ人も少なくありません。特に、家庭と両立しながら夜勤に耐えるのは非常に困難です。


給与・待遇への不満

給与が業務量・責任に見合っていない

排泄・入浴・看取りまで、多様な業務をこなす介護職は、身体的にも精神的にもハードな仕事ですが、その対価としての賃金は他業種と比べて低水準。
例:

  • 初任者研修修了の介護職(常勤):月給18万〜22万円
  • ボーナス:年間10〜30万円(出ない場合も)
    → 同年代の事務職や販売職と比較しても、年間で50〜100万円近く差が出ることもあります。

昇給の仕組みが不明確・不公平

多くの現場では、昇給額が少ない(年500円〜2,000円)か、そもそも評価制度が曖昧で「どれだけ頑張っても給与が上がらない」と感じる職員が多くいます。

非正規雇用・契約社員が多く、将来が不安

派遣やパート職員の割合が高く、昇進や正社員登用が難しい環境では、長く働くことに対して希望を見いだせない人も多いです。

資格取得にかかる費用と労力の割に報われない

介護福祉士などの資格取得には実務経験+研修+試験が必要ですが、「資格を取っても大きな昇給がない」「手当が月3,000円だけ」など、努力に見合った処遇がなされないという不満が強まっています。


キャリアの限界・将来性への不安(詳細版)

キャリアパスが見えにくい

介護職には明確な「昇格ルート」が存在しない職場も多く、「このまま10年、20年続けた先に何があるのか分からない」という不安を抱える職員は少なくありません。

例:

  • リーダー職に就いても業務量が倍増するだけで、給与は微増
  • 管理職になるには別途資格や法人内の人脈が必要
  • ケアマネなどに進もうとしても、事務職への転向で現場から外されるケースも

スキルの汎用性が乏しいという不安

介護職は専門性が高い反面、「他業種に転職しにくいのでは?」という不安を持つ人も多くいます。年齢や経験によっては「今を逃すと他の仕事に行けなくなる」と考えて、キャリアチェンジを急ぐ人も。

精神的・肉体的限界による早期離職のリスク

長く働き続けることに対して、「体力がもたない」「心が壊れそう」といった理由で、30代・40代で“業界そのものから離れる”選択をする人も少なくありません。


家庭との両立が難しい

子育てとシフト勤務の両立が困難

保育園の送り迎えが必要な職員にとって、早番・遅番・夜勤のシフトは非常に厳しい条件となります。保育施設との時間が合わない、家族に負担がかかる、子どもの体調不良で急に休めないなど、家庭と職場の板挟みに悩む方が多数。

配偶者や親の介護と両立できない

自分自身も家庭内に要介護者を抱えている場合、**ダブルケア(仕事としての介護+家族の介護)**状態に陥り、肉体的にも精神的にも疲弊します。

パートナーとのすれ違いや孤独感

夜勤や土日勤務によって「家族との食事の時間が取れない」「休日が合わない」ことが続くと、夫婦関係や親子関係にも悪影響が出ることがあります。
特に独身職員にとっては「この働き方で結婚・出産できるのか?」と将来への不安にもつながり、離職の一因となります。

まとめ:人間関係のストレスは“見えない退職理由”の最たるもの

介護職は「人を支える」仕事であると同時に、「人間関係に支配される」仕事でもあります。目に見えないストレスは非常に根深く、我慢しすぎることで心身を壊してしまう前に、環境を変える、誰かに相談する、異動を願い出るなどの行動を早めに起こすことが重要です。