ステップアップ

介護職として培ったスキルを活かし、福祉や医療関連の仕事へチャレンジしたい方に向けて、具体的な仕事内容・ステップ・ポイントを分かりやすく紹介します。

以下では、「介護職が他業種や関連職種への転職市場で求められる理由」について、より詳細に・具体例を交えて解説します。


介護職が求められる理由

高齢化社会におけるニーズの拡大

日本では急速に高齢化が進んでおり、厚生労働省のデータによると2025年には全人口の約30%が65歳以上になるとされています。これにより、介護だけでなく、医療・福祉・生活支援サービス全体の需要が急増中です。

その中で、介護職経験者は「現場を知っている人材」として以下のように重宝されます。

  • 現場の動きや利用者の心理を理解している
  • 利用者との信頼構築力が高い
  • 実務的な知識や対応力を持っている(例:認知症対応、感染予防など)

対人スキル(ヒューマンスキル)の高さ

介護職は毎日、さまざまな人(利用者・家族・医師・看護師・ケアマネなど)と接します。そこで自然と磨かれるのが以下のようなスキルです。

スキル内容活かせる職種例
共感力・傾聴力相手の気持ちを受け止める接客、営業、相談業務
危機対応力緊急時の冷静な行動(転倒、急変など)医療補助、現場管理
チーム連携多職種と協働し報告・連絡・相談を行う介護事務、福祉施設の運営
ストレス耐性忙しい状況でも業務を遂行する力営業・カスタマーサポート

これらは一般企業や福祉関連の事務職でも「即戦力」として高く評価されます。

介護現場でのマルチタスク能力

介護職は「食事介助をしながら見守り、記録をとる」「突然の対応に柔軟に動く」といったマルチタスクが日常です。
このような「優先順位をつけながら複数業務を同時に進める能力」は、以下のような仕事でも非常に役立ちます。

  • 医療・介護事務(レセプト処理と電話対応など)
  • 一般企業の受付や庶務(来客対応+書類処理など)
  • 福祉用具専門相談員(利用者対応+在庫管理など)

資格や研修制度に裏付けされた専門性

介護福祉士・初任者研修・実務者研修などを持っている場合、それは「知識+経験」がある証拠です。
特に、介護福祉士は国家資格であり、他業界でも信頼性が高いです。

また、多くの施設では下記のような追加研修も行っており、その知識も転職先で役立ちます。

  • 認知症ケア研修
  • サービス提供責任者研修
  • 接遇マナー・感染対策研修

こうした資格や研修経験は、履歴書や職務経歴書でアピール材料になります。

即戦力+成長力のある人材と見なされやすい

企業は「一緒に成長してくれる人」「チームになじみやすい人」を求めています。

介護職経験者は、以下の理由でその条件にマッチしやすいです。

  • 体力的にも精神的にもタフ(夜勤・シフト対応を経験済)
  • 相手の立場で考える癖がある(利用者対応から)
  • 職場の変化に柔軟に対応できる(ユニット型や施設移動など)

さらに、現在は「介護から転職してきた人向けのOJT制度」を導入する企業も増えており、サポート体制も整ってきています。

このように、介護職での経験は「特別なスキルがない」と思われがちですが、実はどの業界でも通用する強みがたくさんあります。転職活動では、これらの強みをしっかりと言葉にして伝えることがポイントです。


介護職からの転職でステップアップできる仕事

介護事務・医療事務

仕事内容

  • 利用者情報の入力・管理
  • 介護保険請求業務(レセプト)
  • 窓口対応、電話応対
  • 書類作成(計画書・報告書・請求書など)
  • スケジュール調整(送迎やサービス提供時間の管理)

活かせる介護経験

  • 記録業務でPC入力に慣れている
  • 家族とのやり取りを通じた接遇スキル
  • 多職種連携経験で調整力が高い

ステップアップキャリア

  • 介護事務 → 主任事務 → 事務長 → 施設運営補佐

生活相談員・福祉用具専門相談員

生活相談員の詳細

  • 利用者・家族との相談対応
  • 利用契約・サービス利用の説明
  • ケアマネ・医師との連絡調整
  • 苦情対応・個別支援計画の作成補助

福祉用具専門相談員の詳細

  • 車椅子・介護ベッド・手すりなどの選定提案
  • モニタリング訪問、使用状況のチェック
  • 商品発注・配送手配・設置業務
  • ケアマネ・家族への使用説明

活かせる介護経験

  • 利用者の身体状況の理解
  • 使用していた福祉用具の知識
  • 利用者視点での対応力

リハビリ職(PT/OT/ST)

必要資格

  • 理学療法士(PT):3年制〜4年制の養成校卒+国家試験合格
  • 作業療法士(OT):同上
  • 言語聴覚士(ST):4年制大学または専門学校+国家試験合格

費用と時間の目安

  • 学費:約300万〜500万円(奨学金や給付金制度あり)
  • 年数:昼間3〜4年/夜間は一部2年制コースもあり

介護職からの転職に向いている他の仕事


ケアマネージャー(介護支援専門員)

業務内容

  • ケアプラン作成
  • サービス調整(事業者との連絡・契約)
  • 利用者・家族への説明
  • モニタリング訪問・記録管理

必要資格

  • 介護福祉士等で実務5年以上 → 試験受験資格
  • 合格率:25〜30%前後(毎年10月試験)

年収の目安

  • 350〜450万円(経験・勤務先による)

訪問介護管理者(サービス提供責任者)

業務内容

  • 訪問介護スタッフのシフト調整・指導
  • 訪問記録のチェック
  • サービス内容の管理・改善
  • 利用者・家族との定期面談

活かせる経験

  • 現場経験が長い方におすすめ
  • 介護福祉士資格が活かせる

高齢者向け施設の運営・マネジメント

業務内容

  • スタッフ管理
  • 利用者対応、施設見学・契約対応
  • 収支管理、シフト調整、行政書類提出

向いている人

  • チーム全体を動かす仕事が好きな人
  • コミュニケーション力が高い人

保育補助・児童指導員

業務内容

  • 保育園での保育補助、絵本読み聞かせ
  • 放課後等デイサービスでの障がい児支援

必要条件(例)

  • 介護福祉士であれば児童指導員としての資格あり
  • 無資格でも保育補助は可能な園もあり

カスタマーサポート(福祉業界製品の窓口対応)

業務内容

  • 福祉用具や介護用品の問い合わせ対応
  • 修理受付、商品説明、操作案内など

向いている人

  • 利用者目線で話せる元介護士は好印象
  • 接遇スキルを活かしたい方に最適

介護系人材コーディネーター・営業

業務内容

  • 介護スタッフの派遣・紹介業務
  • 施設への訪問営業・マッチング提案
  • 面接対応、就業後フォロー

向いている人

  • 現場経験を営業トークに活かせる人
  • 誰かをサポートする仕事が好きな人

最新の転職市場・求人動向(2025年)

介護・医療・福祉業界の売り手市場が加速中

  • 有効求人倍率が非常に高い
     平成31年度(2019年)時点で、介護職の有効求人倍率は平均2.5倍に対し、介護専門職は4.36倍と高い水準を維持していました 。
     さらに2025年には、約32万人~37.7万人の介護職員が不足すると予測されており、有効求人倍率も高止まりしています。
  • 売り手市場の継続
     求人件数は2019年から2025年1月にかけて+42.5%増加し、正社員、パートとも増加傾向が続いています。
  • 介護職は求職者より求人が多い状態
     1人に対して平均3.5~3.8件の求人があり、応募者側に選ぶ余裕がある「売り手市場」となっています。

他業種との比較&市場全体の流れ

  • 全職種の有効求人倍率
     2025年2月時点で全国平均は1.24倍で、求職者数と求人数のバランスはやや再び求人重視に傾いています。
     しかし、介護・医療分野は全国平均を大きく上回る高倍率が続き、依然として売り手市場です。
  • 職種別の傾向
     IT・通信(7倍超)、人材・コンサル(5~9倍)などが高く、介護・福祉関連も安定して高倍率領域に入っています。

転職希望者にとってのチャンスと注意点

チャンス

  • 求人が豊富で選択肢が多い
     多数の求人が出ており、働き方(正社員・パート切替可)や企業規模など希望に合わせて選びやすい 。
  • 有利な条件交渉が可能
     企業は人材確保に苦心しているため、給与・待遇・勤務時間などで交渉しやすい局面です。
  • 未経験でも採用されやすい求人も増加中
     医療・福祉・介護業界向け求人は未経験歓迎のものが多く、研修や資格取得支援をセットした求人もあり。

注意点

  • 他業種の求人は数が少なめ
     介護職以外の業界は求人件数が季節や景気で左右され、介護ほど常時多くはありません。
  • 転職で年収が下がるケースも
     医療・福祉・介護業界内の転職では、年収が上がる人は27.7%、下がる人は31.5%と、下がる傾向がやや強いです。
  • 情報収集に注意が必要
     他業種に転職すると待遇判断が難しいため、業界平均や実際の口コミなどリサーチが不可欠です。

転職戦略のヒント

ポイント内容
介護・福祉は高倍率で売り手市場求人数豊富で、選びやすく待遇交渉にも強い
他業種転職は選択肢少なめでも可能医療事務・ケアマネ等の求人は安定的に出ている
年収・待遇の情報収集を怠らずに他業界への転職ではしっかり比較検討を
未経験歓迎求人も増えている資格取得支援あり。ゼロからでもチャレンジ可
選びやすい求人環境を活かそう正社員・パートの幅広い求人を活用しよう

転職成功へのアドバイス

  1. 介護業界内の次ステップに応募しつつ、条件が合えば他業種も視野に
  2. 年収や勤務条件を複数求人で比較し、希望ラインを明らかに
  3. 転職サイト・エージェントを活用し、情報収集と交渉を円滑に
  4. 現職と比較して何が改善されるのか、自己分析を徹底しよう

このように、現在の介護・福祉職市場は非常に好条件で、転職先の選択肢も広がっています。特に他業種へのチャレンジを考える場合、「求人の多さ」と「待遇面における交渉しやすさ」という点で非常に有利な環境です。自分の経験と希望に合った求人を見逃さず、じっくり比較検討して転職活動を進めましょう!


まとめ|介護職からの転職成功のカギ

介護職から他業種や関連職種へ転職を考える際、2025年現在は売り手市場が続いており、経験者にとってはチャンスの多い状況です。

介護職の経験は多くの職種で高く評価される

介護現場で培った「共感力」「観察力」「危機対応力」「多職種連携力」「PC入力スキル」などは、事務職・相談職・営業・保育・カスタマーサポートなど多岐にわたる職種で強みになります。

特に、

  • 介護事務・医療事務
  • 生活相談員・福祉用具専門相談員
  • ケアマネージャー
  • リハビリ職(国家資格)

などは、ステップアップとして自然な流れであり、職場環境の改善や収入アップにもつながる可能性があります。

求人市場は追い風!2025年はチャンスが豊富

  • 介護業界の求人倍率は3.5倍以上と非常に高く、希望に合った職場を選べる環境です。
  • 未経験OK・研修充実の求人も多数あり、「初めての転職」でも心配ありません。
  • 転職エージェントや専門求人サイトを活用することで、非公開求人や条件交渉のサポートも受けられます。

転職成功のための具体的アクション

ステップ内容
自己分析自分の得意・苦手、どんな仕事が合うかを整理する
スキルの棚卸し介護経験を「具体的なスキル」に言語化しておく
求人比較複数の求人を比較して、自分に合う職場を見極める
書類・面接準備介護職の経験がどう活きるかを明確に伝える
サポート活用エージェント、ハローワーク、転職フェアなども利用

他業種を目指す際の注意点

  • 一部の職種では年収が下がる可能性もあるため、条件の優先順位をはっきりさせる
  • 未経験業界では最初は覚えることが多く、丁寧な姿勢が重要
  • 資格が必要な職種もあるが、支援制度を活用すれば負担を抑えられる

最後に

介護職は「誰かのために動ける」「状況判断ができる」貴重な存在です。その経験は他の業界でも大いに活かせます。

「もっと働きやすい職場で」「将来のキャリアアップに向けて」「身体への負担を減らしたい」

そんな思いを、ただの不満で終わらせず、行動に移すことが大切です。転職は勇気のいる決断ですが、情報と準備があれば、未来は大きく変わります。

次のステップに進むあなたを、全力で応援します。どんな選択も、あなたの経験は無駄になりません。希望の働き方を叶えるために、一歩ずつ進んでいきましょう。